天野健作先生と田村菜月さんの共著論考「アイドル学のススメ:
「FRUITS ZIPPER」、「=LOVE」に見る現代社会の“鏡”」を読んでみた。
田村菜月さんは元STU48の第2期生。STU48を卒業した後は大学でアイドルグループのFizzyを立ち上げるなど、今でも積極的にアイドル活動を続けている。
論考の中では「かわいい」をアイドルの絶対的要因として分析し、例としてFRUITS ZIPPERを挙げている。
- フリフリの衣装(見た目)
- 高めのトーンでの話し方(キャピキャピさ)
- 活発な動き(飛び跳ねたり、ジェスチャーやリアクション)
これらの要素が組み合わさって、推しはかわいいのだ。もちろん第一印象では重要になるが、決して魅了されるのは顔の容姿だけではない。
田村さんはアイドルが人気を獲得し、社会への影響力を持つための7つの要素として以下を挙げている。
①「ビジュアル(外見)」、②「パフォーマンス(歌唱・ダンス)」、③「成長や背景などのストーリー(物語)」、④「楽曲」、⑤「メンバーのキャラクター(性格)」、⑥「SNS 活動」、⑦「グループのコンセプト(概念、世界観)」。
引用元:
https://www.u-elsi.org/pdf/Journal003_Amano.pdf
具体例として、=LOVEは完成度の高いダンスパフォーマンス、FRUITS ZIPPERはあえて不器用さを残した「手の届きそうな親近感」の演出という、対照的なアプローチが取り上げられている。
④と⑥ではSNSについて言及されており、拡散(バズ)やSNS運用での集客の重要性が指摘されている。地下アイドルは対バンライブやビラ配りを除くと、グループを知るきっかけのほとんどがインターネットであるため、その重要性は今後さらに増していくだろう。
ファンによる経済への貢献にも触れられている。AKB48の全盛期には、総選挙や握手会の影響で、一人で大量にCDを購入するファンも多く、音楽チャートを独占していた。いわゆる「AKB商法」として批判されることも少なくなかった。現在ではサブスクリプション型の音楽配信サービスが普及し、総再生回数などによって、楽曲の正確な人気度合いがわかるようになったが、一時期はまさに「アイドルが音楽市場を乗っ取っていた」と言っても過言ではない。
ツーリズムの観点から見ると、アニメオタクが聖地巡礼と称してアニメの舞台となった場所を訪れる活動は、すでに一般にも広く認知されている。一方で、アイドルオタクの場合も、遠征先での食事・宿泊・交通費などの支出を通じて、地域にプラスの経済効果をもたらしていると言えるだろう。食事の面では、推しのチェキを料理に挿したり添えたりするチェキ飯といった独特な文化も存在する。オタクは47都道府県、時には海外まで推しを追いかけていく。
刊行予定の『アイドル学入門』も早く読んでみたい。特に第6章と第8章が気になる。
清純イメージと言えば、モーニング娘。やAKB48でたびたび話題になった恋愛禁止の縛りがある。これは日本の女性アイドル特有なのだろうか?K-POPアイドルや男性アイドルでは、恋愛に対する規制は比較的緩い印象を受ける。
かつては週刊誌がスクープする程度だったが、近年では一般人がXに証拠写真付きで投稿するケースも増えてきた(地下アイドル界隈が多い)。表現の自由は保障されるべきだが、その自由を濫用して、アイドル本人の名誉を毀損するような行為は深刻な問題として捉えられるべきだと思う。